Tufter's Voice#01|つちやひさと(Neutuft)
Share
タフティングを続ける人の、リアルな声。
Tufter's Voice #01
タフティングを趣味や仕事で続ける方に聞く、インタビューシリーズ。
記念すべき第一回目のゲストは Neutuft(ノイタフト)の つちやひさとさんです。

私たちRUGMATAGがつちやさんを知ったのは、2021年6月。
まだ日本語でタフティング情報がほとんど見つからなかった頃、「自分たちで発信していこう」と考えていたタイミングで、 つちやさんのnote 記事に出会いました。
私たちが知る限り、タフティングを日本語で丁寧にまとめた最初期の記事で、 とても分かりやすい内容で驚いたのを覚えています。
今回はそんなつちやさんに、始めたきっかけ/制作環境/タフティングで変わったことまで伺いました。
自己紹介
作品や活動のスタイルやテーマ
個性のないデザイン、匿名性の高いデザインを目指したいと思っているので、自分の作品として何かを作る場合には、 抽象図形とか意味を持たないパターンを組み合わせることが多いです。
また、目に見える部分ではなく、抽象度の高い仕組みの部分に工夫を加えるのが好きです。
例えば自分の運営しているタフティングワークショップでは、指定のウェブページでパラメトリックにデザインを生成していただき、 そのデザインデータで制作をしてもらう仕組みにしています。
できあがる作品単体で見ると特に際立った個性はないけれど、数が増えるとコンセプトが立ち上がってくる。そんな「造形を生み出す仕組み」に工夫が加えられたようなものが好きです。
はじめの一歩
はじめたきっかけ
幼少期からものづくりが好きで、大学でも美術学科に進み、グラフィックデザインやクラフト、映像など、幅広く「つくること」について学びました。
大学卒業後は新卒でウェブ制作会社に就職し、手を動かすものづくりからは少し離れていました。
そんな中で2021年のはじめごろ、YouTubeで海外の方がタフティングをしている動画をたまたま見かけて「これは楽しそうだな」と興味を持ったのがきっかけです。
最初はシェアアトリエを借りて一人で黙々と制作していました。
仕事でもウェブ制作に携わっていたこともあり、「ウェブで発信しながら、一人で事業っぽいことのPDCAを回す経験をしてみたい」という気持ちもあり、 タフティングを絡めて何かできないかと考え、一念発起してアトリエ物件を契約し、細々とワークショップ活動を始めました。
最初の作品
最初に作ったのは、だいたい45×60cmくらいの、玄関マットサイズのラグでした。

制作期間は、記憶しているかぎりでは2〜3日ほどだったと思います。
当時はタフティングに関する情報がウェブ上にほとんどなく、道具や毛糸、裏地、ガンの状態まで、すべてが手探りの状態でした。

そんな中で、なんとか一枚のラグとして形にできたので、完成したときの喜びはひとしおでした。
一方で、毛糸の消費量にかなり驚いたことも覚えています。
たまたま最初にうまくいったのが比較的高級な手芸用毛糸で、裏地もフェルトを丁寧に貼る仕様にしていたこともあり、 「このままだと材料費がかかりすぎてしまう。続けるにはコストを下げる工夫が必要だ」と、感動と同じくらい現実的な課題も見えてきました。
初期費用と最初に揃えたもの
自分の場合、いろいろ試していた期間があるのでどこまでを初期費用とするか迷いますが、
消耗品を除いて「最低限タフティングできる機材」でいうと 5〜6万円 くらいじゃないかなと思います。
- タフティングガン(AK-1タイプ):3万円くらい
- フレーム(DIY):2,000〜3,000円程度
- 周辺備品(糸巻き機/クランプ/プロジェクター/ハンドミキサー等):2万円くらい
※試行錯誤で増える部分もあるので、目安として参考にしてください。
作業環境・不安と対策
作業場所
現在は、自分が運営しているシェア工作室でタフティング制作をしています。

DIYで制作した 60×90cm のタフティングフレームをメインに使用しています。
多数の人が多目的に利用する場所なので、タフティング専用の常設スペースがあるわけではなく、 制作のたびにフレームを共用の作業テーブルに固定して使う運用です。
作業が終わったらフレームを外して片付ける、という形で回しています。
音の感じ方と対策
自分の場合は工作専用の作業場所で制作していることもあり、タフティングの音についてはほとんど気にしていません。
周りの利用者も木工など音の出る作業をしている環境なので、タフティングガンの駆動音が特別に目立つ感覚もあまりないです。
丸ノコや電動サンダーなどの木工用の電動工具と比べると、タフティングガンの音は「ほぼ音が出ていないようなもの」と感じています。
一般的な賃貸住宅でも、常識的な時間帯に使うぶんには、そこまで神経質にならなくても大丈夫なレベルではないかなと思います。
どちらかというと、毛糸を打ち込むときに机や台がガタガタと揺れる音のほうが大きく感じられるかもしれません。
自分の環境では防音・防振の特別な対策はせず、「多少の作業音が前提の工作室で作業する」という形でクリアしています。
はじめる前の不安と実際どうだったか
はじめる前は、正直あまり不安はありませんでした。
それよりも、調べなくてはいけないことがたくさんあって、 まだ世の中であまり誰もやっていないことに手を出しているような感覚のほうが強く、それがけっこう楽しかったです。

実際にやってみてから不安になったのは、ひとつは材料効率・材料費の問題。
もうひとつは、裏地の仕上げ方です。
「丁寧に、頑丈に」と考えれば考えるほど、どこまでやるのが正解なのかキリがない部分もあります。
材料費については、タフティング用の毛糸を扱ってくれる業者さんが増えたことで、だいぶ解消の方向には向かっていると思います。
一方で、ほかの表現技法と比べると、どうしても材料費が比較的かさみやすい技法だという課題は、今でもあると感じています。
裏地については、最初のうちは接着剤の種類も分からず、いろいろな雑貨屋さんを巡って市販ラグの裏面を観察しながら、 制作のしやすさと日用品としてのメンテナンスのしやすさ、その両方のバランスが取れた仕上げを少しずつ学んでいきました。
タフティングで変わったこと
タフティングをやって一番良かったこと/嬉しかった瞬間
作品やものづくりに関する部分から逸れてしまうのですが、タフティングをきっかけに、 ワークショップに参加いただくお客様を筆頭に、人間関係が爆発的に広がったことが一番良かったことだと感じています。

ラグマタグさんとのご縁もそのひとつです。
2021年に自分がワークショップ活動を始めた当初、大阪から「つちやさんのワークショップに参加したい」と言ってくださった方がいました。
当時はタフティングワークショップがまだ世の中に認知されていなかったこともあり、 わざわざ東京まで来てもらうのも申し訳ないなと思い「ラグマタグさんという、ちょうど開業準備中のワークショップがあるので繋ぎますね」と、 当時はまだ面識もないまま紹介したのが最初のきっかけでした。
そこから実際につながりが生まれて、今でもお付き合いが続いています。
今運営している工作室も、もともとは自分のタフティングワークショップ用に借りたアトリエに、 大学時代の友人が遊びに来てくれたところから「一緒にやろう」と始まったものです。
振り返ると、タフティングをやっていなければ出会わなかった人たちとの関係性のうえに、今の刺激にあふれた環境が成り立っていると感じます。
ほかにも、2021年あたりにタフティングのことをほぼ同じタイミングで調べ始めて、 黎明期に情報交換をしていたような人たちとは、同胞意識のようなものも感じており、 今でも関係性が続いているのはとても喜ばしいことです。
自分はなるべく目立たない場所で淡々と活動するのが性に合っているタイプですが、 それでもたまにタフティングの集まりに声をかけてもらったり、気にかけてもらえたりするのはありがたいし、嬉しいなと思います。
つくったラグはどうしてますか?(自分用/プレゼント/販売など)
自宅の玄関には、自分で作ったラグを置いて、気分や季節に合わせてときどき入れ替えながら使っています。
最初のうちはハンドメイド品ということもあり耐久性をかなり気にしていましたが、 実際に2年ほど使っていても特に壊れることもなく、思っていたほど心配はいらなかったなと感じました。
そもそもラグ自体そんなに手荒に扱うものでもないので、日常使いであれば必要以上に神経質にならなくても大丈夫だったなと思っています。
何より、自分で作ったものを暮らしの中で実際に使えるのはやはりうれしいですし、自然と愛着もわきます。
タフティングをはじめてからの“自分の変化”
いまでも平日は会社員としてフルタイムで働きながら、その合間にワークショップの運営を続けていますが、 タフティングを始めたあたりから、生活全体がものづくり中心になってきたと感じています。
仕事と私生活のどちらにも「つくること」が入り込んでいて、それが当たり前の前提になりました。
なかでもタフティングガンの仕組みや調整の部分については、 日本でもかなり有数と言っていいくらいにはノウハウを持っている自信があります。
道具の構造やクセを理解して、どうすれば安定して使えるかを考え続けてきた時間は、大きな蓄積になっています。
タフティングに目をつける前は自分の強みがよく分からなかったのですが、 「ここなら自信を持って語れる」と思える軸が一つできた実感があります。
これから
これから挑戦したい作品/活動
劇的なことや大きな変化はあまり求めていないのですが、 今やっていることを細々と淡々と「まだそれやってるの?」と言われるくらいまで長く続けて、それが一種のブランドになったらいいなと思っています。
その中で、すでに一つ形になったこととしては、 タフティングガンという道具を、工作室の「普通の備品」のひとつとして紛れ込ませることができた点は、自分なりの実績だと感じています。
特殊な道具ではなく、ほかの工具と同じように棚に並んでいる状態まで持ってこられたのは、けっこう嬉しいことです。

これから先は、この道具や技法に触れるためのハードルを、どう下げていくかが課題だと思っています。
タフティングを「特別なこと」ではなく、「ちょっとやってみようかな」と思えば手が届くものとして、 ゆっくり時間をかけて馴染ませていけたらいいなと考えています。
これからタフティングを始めたい人へひとこと!
タフティングは、毎日使うラグのような日用品でもあり、 壁に飾るような美術品にもなるところがユニークな技法だと思います。
ちょっと歪んだイラストや、あまり自信のない絵でも、タフティングで表現してみると不思議といい感じになります。
絵が上手い人も、そうでない人も、一度かたちにしてみると同じように「できた」という喜びを味わえる技法だと思います。
そういう意味でも、間口が広く奥深い技法だと感じます。
実際にやってみると、ものづくりとしても、表現としても、じわじわと「味わい深いな」と感じてもらえると思います。
気になっている方は、まずは一度、お近くのワークショップに足を運んでみてください。
Neutuft(ノイタフト)

RUGMATAGは、タフティングを楽しく快適に続ける人が増える活動に注力しています。
Tufter's Voice は、タフティングを始めたい人にとっての「具体的なイメージ」となり、 出演者の方の作品・活動の紹介にもつながるコンテンツを目指しています。



