Tufter's Voice#03|(k)eito(エイト)
Share
タフティングを続ける人の、リアルな声。
Tufter's Voice #03
タフティングを趣味や仕事で続ける方に聞く、インタビューシリーズ。
第三回目のゲストは (k)eito(エイト)さんです。


私たちがエイトさんを知ったのは、2023年夏にRUGMATAGが初めて開催した
「SUMMER TUFTING CONTEST」にご参加いただいたことがきっかけでした。
初めてのコンテストで「参加してくださる方がいるのかな‥」と少し不安もある中、
エイトさんが応募してくださったのは、立体のテントをモチーフにしたタフティング作品。
しかもライトとしても楽しめるという、タフティングの可能性を感じさせてくれる、とても印象的な作品でした。

キャンプが大好きなエイトさんだからこそ生まれる、アウトドアとラグを掛け合わせた独自の表現。
現在では、メーカーからのオーダーも絶えず、「制作が追いつかないほど」多くの依頼が集まる人気に。
その理由も、今回のインタビューから少し見えてくるかもしれません。
今回はそんな(k)eito(エイト)さんに、タフティングを始めたきっかけ/制作環境/作品づくりへのこだわり/タフティングを通して変わったことまで伺いました。
自己紹介
活動名/地域
エイト / (k)eito / 関東(埼玉県)
今の活動
メーカー様より受注及び卸し販売
普段のお仕事
会社員
制作やワークショップなどの頻度
平日⇒就業後 2~4時間程度 / 週2~5回
休日⇒3時間~10時間 / 月3回~8回
依頼タイミングによりますが、2025年は月平均150時間程度でした。
Instagram: @k_eito_8
IG:@yoshida_takaya
作品や活動のスタイルやテーマ
テーマ:【アウトドア×rug】
モチーフ:アウトドア用品やそれに付属して使えるもの
サイズ感:アウトドアで使う前提なので30~60cm程度


はじめの一歩
はじめたきっかけ
一番のきっかけは、キャンプが大好きでお気に入りの道具をずっと眺めていたい。という純粋な欲求からでした。
キャンプはこだわりのギアに囲まれて過ごす時間が醍醐味ですが、ある時、テントの中に入ってしまうと、惚れ込んで手に入れた外装が見えなくなる。という矛盾に気づいたんです。
「テントの外装をラグとして中に持ち込めればいいのでは!?」と考えたのが、制作のスタートでした。

当初は自分用の1点を作るのが目的でしたが、実際にタフティングガンを握り、自分の手で形にする【ものづくり】の喜びに深くのめり込みました。
また、私自身が副業を検討していたタイミングとも重なり、この「アウトドア×rug」という独自の切り口であれば、自分にしか提供できない価値が作れるのではないかと思い、始動しました。

最初の作品
最初の作品は、知り合いのショップの外装をモチーフにしたラグでした。
サイズ: 約60cm × 60cm
制作時間: 初めてということもあり、正確な時間は計り知れませんが、とにかく膨大な時間をかけて試行錯誤を繰り返した記憶があります。
感想: 当時は全てが手探りで、完成させるまでに「めちゃくちゃ時間がかかったな」という疲労感もありました。
しかし、いざ完成して相手に手渡した際、目の前で本当に喜んでくれたその瞬間に、それまでの苦労が全て吹き飛んでしまいました。
【自分の手で作ったものが、誰かの心を動かす】という体験は、それまでの仕事とはまた違う種類の感動でした。
この時の「喜びの瞬間」が、自分ひとりの趣味で終わらせるのではなく、ブランドとして「(k)eito」をスタートさせる大きな原動力になっています。
初期費用と最初に揃えたもの
初期費用は、タフティングガン一式と自作の木枠2種類でおよそ10万円ほどだと思います。当時はまずは形にすることが最優先だったので、随所にコストを抑える工夫を凝らしていました。
その象徴が、今でも使っている【自作の糸立て】です。

100均の有孔ボードに、これまた100均の菜箸を突っ込んだだけの代物です。
正直、専用の道具と比べて使いやすいのかは自分でもよく分かっていないのですが(笑)、この工夫しながら始めた時の感覚が染み付いていて、今でも愛用しています。
まずは手元にあるもので工夫して作り始める。そんな泥臭いスタートが、今の自分の制作スタイルの根っこにある気がします。
作業環境・不安と対策
作業場所
現在は、自宅のリビングを作業スペースとしています。制作に使う木枠をそのままの状態で保管場所からテーブルにセットしています。作業のたびに設置するスタイルです。




制作中は文字通りリビングを占領してしまうのですが、その分、作業を始めると一気にそこが自分だけの工房に変わるという、スイッチが入る感覚があります。
締め切り前は地獄みたいになってます。笑
音の感じ方と対策
音の体感: タフティングガンの動作音そのものは、体感として「掃除機の静音モード」くらいだと感じています。(笑)
ただ、メンテナンスの状態によって音がうるさくなったり、響き方が変わったりする繊細さがあります。

事前の徹底検証: 活動を始める際、近隣への配慮として現状分析を行いました。
屋外にスマホの録音機能を仕掛け、リビング内で木枠の向きや壁までの距離を変えながら、外への音漏れをテストしました。
その結果、雨戸を閉めて密閉すれば外への音はさほど気にならないことが判明したため、打ち込み作業については深夜に進めることもあります。
運用とメンテナンスのルール: ただし、以下の2点は自分の中のルールとして徹底しています。
① 作業の切り分け: ガンの音以上に響きやすい仕上げの掃除機だけは、必ず日中の時間帯に行ってます。
② 状態の維持: メンテナンス(特に油切れ)を怠ると音がうるさくなる予兆を感じるため、こまめな注油や点検を欠かさないようにしています。
はじめる前の不安と実際どうだったか
始める前は、技術をどう習得すべきかという不安がありました。いざ始めてみると「仕上げ」の工程には頭を悩ませています。納得のいくクオリティを目指し、国内外のタフティングの動画を見ました。
しかし、画面の中で仕上がっていく鮮明で美しい仕上げは本当に素晴らしく、今でも目標の一つです。

ただ、実際に自分で打ち込み、フィールドでの使用を想定した時、その美しさの定義みたいなものが少しずつ変化していきました。
アウトドアで使うということは、設営や撤収のたびに、ラグを丸めたり広げたりする動作を何度も繰り返すということ。
タフティングは、ラインを際立たせるために深く刈り込むほど視覚的なインパクトは強くなりますが、その分、丸める際の摩擦や負荷で毛先が広がりやすくなることもあります。
数シーズン使い込んだときに、デザインの輪郭がぼやけてしまうのではないか。
そう考えるようになりました。
もちろん、ひと目で惹きつける鮮烈な美しさも追求したい。
けれど、私がより重きを置きたいのは、ヴィンテージギアのように過酷な使用にも耐え、年数を経てもデザインが保たれ、使い込むほどに味わいが増していくものです。
"経年劣化"ではなく、"経年優化"していくもの。
これは、私が尊敬するキャンプガレージメーカー「neru design works」さんが大切にされているテーマのひとつでもあります。
動画で学んだ素晴らしい基礎を土台にしつつ、フィールドでの実用もしながら自分なりの仕上げ具合を毎回苦慮しながら行っています。
タフティングで変わったこと
タフティングをやって一番良かったこと/嬉しかった瞬間
活動を続ける中で、メーカーの方にサンプルを評価していただいたり、実際に商品化が決まり、それが売れていくというプロセスは、大変嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいになります。
しかし、それ以上に心の底からやっていて良かったと思えるのは、キャンプ場やインスタ上で自分のラグと再会できたときです。

フィールドで誰かのキャンプの大切な一部として馴染んでいる姿を見たときの喜びは格別です。
使い込まれている様子を見ると、まるで旅に出した我が子に再会したような気持ちになります。
「あ、ちゃんと相棒として可愛がってもらえているな」と。


ビジネスとしての成功も嬉しいですが、私が目指しているのは、やはりフィールドで愛される道具作りです。焚き火の傍らで、rugのモチモチ感を楽しんでもらっている光景に出会えることが、次の一枚を打ち込むための何よりの原動力になっています。

つくったラグはどうしてますか?(自分用/プレゼント/販売など)
ありがたいことに、現在はメーカー様へのサンプル提供や、それに基づいた受注生産がメインとなっているため、製作したラグのほとんどは完成後すぐに旅立っていきます。そのため、実は私の手元にはほとんど作品が残っていません。
どれも「自分用としても1つ手元に置いておきたい!」と思うものばかりなのですが(笑)、それらが誰かのキャンプの相棒として外の世界へ出ていくことが、今の活動の形になっています。

タフティングをはじめてからの“自分の変化”
大きく分けて2つの変化がありました。
1. 領域を超えた学びと繋がり
一つは、会社員としての日常では決して出会えなかった方々との繋がりです。
メーカーの担当者様やショップの方など、普段では交わることが無い異なるプロフェッショナルとモノづくりに向き合う中で、人としての在り方や仕事への情熱など、日々多くの刺激と学びをいただいています。
この経験は、私自身の視野を大きく広げてくれました。
2. 自分の手が届く範囲で、納得感を作れる居場所
会社での仕事は規模も大きくやりがいもありますが、時に自分の手が届かないところで物事が決まっていくもどかしさもあります。
そんな中、ラグ作りは「打ち込んだ分だけ、形になる」という、ごまかしのきかない手応えを私にくれます。仕事で煮詰まっても、rugの質感に触れながら無心で打ち込めば、心のリセットができる。
会社という組織に依存しすぎず、自分の手の中に「もう一つの確かな世界」を持っているという実感が、精神的な風通しを良くし、結果として本業にもしなやかに向き合う余裕をくれています。
これから
これから挑戦したい作品/活動
将来的にドーンと大きなアイテムも作ってみたいという想いはありますが、やはりアウトドアに持ち出すことが前提なので、今は現状の扱いやすいサイズを大切に活動しています。
まずは今の自分にできる範囲で、アウトドアに持ち出したくなるような作品を実直に作り続けていきたいです。そして、メーカーの方々と関わる機会なども通じて、一人でも多くのキャンパーの方に、rugの心地よさを届けていければと思っています。
いつかどこかのキャンプ場で、自分の作ったラグが当たり前のように風景の一部になっている、そんな再会の瞬間を増やしていくことが今の楽しみです。

これからタフティングを始めたい人へひとこと!
まずは、楽しく作ることが一番!
道具の工夫や技術の習得、素材へのこだわり……いろいろと考え出すと奥が深い世界ですが、まずは自分の手で形が出来上がっていく喜びを、純粋に味わってみてほしいです。
これを作って、どこで使おう?とワクワクする気持ちが、一番の原動力になります。
難しく考えすぎず、まずは一緒に楽しくやってみませんか?
RUGMATAGは、タフティングを楽しく快適に続ける人が増える活動に注力しています。
Tufter's Voice は、タフティングを始めたい人にとっての「具体的なイメージ」となり、 出演者の方の作品・活動の紹介にもつながるコンテンツを目指しています。

エイトさんの作品にも使用されている、RUGMATAGのニュージーランドウール100%タフティング用毛糸。
しっかりとした弾力と耐久性があり、毎日踏む床置きラグや、本格的な作品づくりにもおすすめです。